ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
まずモーツァルトにとってピアノという楽器がどういう意味を持ち、役割を果たしたかについて、簡単に触れたいと思います。モーツァルトの幼時には、すでにチェンバロの時代は次第に廃れつつあり、ハンマー装置のクラヴィーアにとってかわろうとしていましたが、彼が最初に規しんだのはピアノではなくチェンバロでした。それはやがてハンマーフリューゲルに代わりましたが、この18世紀後半的な機能と響きを持っている楽器は、今日のピアノのような豊麗な響きをもつものではなく、もっとすっきりと、引き締まった、簡潔な音を特徴としています。モーツァルトのピアノ音楽の大部分が、今日のピアノの有するダイナミックな機能の上に立っているのではないことを忘れてはなりません。しかし、一概にモーツァルトのピアノ音楽といっても、作曲年代によっては対象とした楽器にかなりの違いがあります。たとえば、晩年のピアノソナタなどには、後のピアノ音楽の方向を暗示しているような、明らかにピアノ的な大胆で新しい発想に満ちています。 モーツァルトはピアノに限らず、ヴァイオリンを始めとしてホルン、フルートなど多くの楽器の協奏曲を書いていますが曲数という面では、ずば抜けてピアノ協奏曲が多いのがわかります。モーツァルトは生涯で27曲のピアノ協奏曲を作曲していますが、今回演奏する作品はその最後のものであり、モーツァルトのなくなるほぼ1年前の作品です。多くの作曲家は、年齢を重ね、作曲の技と手法が円熟してくればくるほど名曲を残していますが、このピアノ協奏曲第27番もその例外ではありません。モーツァルトの作品番号は、ほぼ作曲順につかられていますが、この協奏曲の作品番号はK.(ケッヒェル)595であります。それ以降、病床で未完に終わった「レクイエム」(K.626)まで約30曲ほどが作曲されましたが、その内協奏曲はK.622のクラリネット協奏曲くらいしかありません。 このピアノ協奏曲第27番が、それほど円熟しきったモーツァルトの珠玉の協奏曲であるということは、本日の演奏をお聴いただければ、ご理解いただけるでしょう。(竹野篤志)
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