交響曲第25番ト短調K.183
1.Allegro con brio ト短調 2.Andante 変ホ長調
3.Menuetto ト短調 4.Allegro ト短調
映画「アマデウス」をご覧になった方も多いと思います。自殺を図ったサリエリが病院に担ぎ込まれるショッキングなシーンからはじまりますが、瀕死のサリエリをのせた馬車が疾走する、そのシーンをよりいっそう緊迫したモノにしていたのが交響曲第25番でした。
モーツァルトは生涯40曲以上の交響曲を生み出していますが、そのなかでも主調が短調の曲は2曲しかありません。その内の1曲がこの第25番です。
この曲が作曲された1773年という年、モーツァルトはヴィーンに旅行をしています。就職活動が目的の旅行だったのですが、この目的はかないませんでした。しかしながら他にがえがたい収穫もあったのです。ドイツ圏の芸術の世界はシュツルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)という、おおきな転換期を迎えていました。劇作家、マキシミリアン・クリンガーが1776年に書いた同名の戯曲に由来したこのムーブメントは、古典主義や啓蒙主義に異議を唱え、理性に対して感情が勝るとしたもので、音楽においては、悲愴なほどの情緒表現、短調の偏愛、密度の濃い主題の変容などといったかたちとなってあらわれていました。モーツァルトもこれを敏感に感じ取ったのか、彼にとってはじめての短調の交響曲は、それまでの明るく軽快なイタリア風のものとまったく違う、あらたな段階の作品となったのでした。
第1楽章の聴き所は、序奏もなくいきなりはじまる厳しいシンコペーションと幅広い旋律線、そして、哀愁を帯びたオーボエのロングトーンですが、しかしホントにきついのは実はホルンなのです。第2楽章は前の楽章とはうってかわってホっとするような、温かみのあるメロディー。ファゴット2本が後ろからしっかりと支えます。第3楽章はメヌエット。といえば踊りの音楽ですが、厳しい踊り。トリオは木管楽器のみに委ねられます。そして終楽章。1楽章ほどのスピード感ではありませんが、追い立てられるような切迫感は、1楽章以上のものを内包しています。この厳しさを最後まで貫き通すことはできるのでしょうか?請うご期待、です! (田邉 恭)
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