交響曲第36番 ハ長調 K.425「リンツ」
「リンツ」はオーバーエステライヒ州の州都で、ウィーン、グラーツに続くオーストリア第3の都市、オーストリア最大の工業都市であると同時に古い伝統文化の遺産も数多く残る都市です。ヨーロッパの南北を結ぶ"塩の道"と、東西に流れる"ドナウ川"が交わる位置にあり,古来から交通の要として発展した街です。ブルックナーが生まれ、そしてモーツァルトのハ長調の交響曲の標題となっています。
この曲が世に出た1783年前後はモーツァルトにとって非常に大きな人生の転機といえる時期でした。1781年にかねてから相性のよくなかったザルツブルクの大司教と決別し、ウィーンでの新生活をはじめていたモーツァルトは、翌年コンスタンツェ・ウエーバーと結婚、そして夫婦で最初のザルツブルクへの里帰りの帰りに立ち寄った街がリンツでした。既に名声が轟いていたモーツァルトを迎えたリンツの劇場では急遽音楽会を企画したが、モーツァルトの方は披露する新作の持ち合わせがありません。その為わずか4日ほどで、新しい交響曲を1曲書き上げた・・・といかにも天才モーツァルトらしいエピソードも残されています。しかし、重厚な序奏部と終楽章にハイドンの影響を残すものの、まさにモーツァルトらしい、他に替えがたい魅力的な作品に仕上がっており、決してこの曲がやっつけ仕事の成果ではないということを物語っています。(田邉 恭)
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