交響曲第39番 変ホ長調 K.543
この39番と40番、41番の交響曲は、モーツァルトの最後の三大交響曲と呼ばれています。
ギリシャの最高神ジュピターの名にふさわしい41番、数少ない短調の交響曲で哀しみを含んだ美しさが比類のない40番、そして39番は……。ちょっと知名度が落ちるようですね。でもそれは単に他の2曲ほど際だった特徴がないからで、正統的な古典交響曲の神髄を極めた傑作といえるでしょう。 とはいえ特徴がないわけではありません。この曲には、オーボエが使われていません。オーボエはモーツァルトの管弦楽曲ではほとんど常に使われているのですが、この曲では代わりにクラリネットが使われています。貴族や宮廷に雇われている時代ならば、そこのお抱え楽団の編成に合わせる必要もありましたが、この頃のモーツァルトは自作の曲を演奏する予約演奏会を開催していたので、楽器編成は自由に決められたはず。従って選択された楽器編成は、まさにモーツァルトがその曲に最適と考えたものなわけです。華やかではあるけれど鋭角的な音のオーボエではなく柔らかな音のクラリネット。つまりこの曲はそういう曲な
のです。
第1楽章は、モーツァルトの交響曲としては珍しく、ゆっくりとした序奏付きです。序奏にしては厳しい雰囲気が高まり、どんなテーマが出てくるかと手に汗を握っていると、ほんわかとした美しい旋律が。もう一つのテーマ・第2主題も木管楽器の柔らかな音色で美しく奏でられます。
第2楽章は、なだらかな前半とリズミカルな後半がコンパクトにまとまった旋律が中心になっていて、それが微妙に変化して現れます。派手さはありませんが、じっくり聴いていると、やはり天才だなあ、としみじみ感じてしまいます。
第3楽章はメヌエット、というのがこの時代のお約束。中くらいの速さの3拍子の舞曲ですが、正直言って交響曲の中では一番退屈で、まもなくベートーヴェンがスケルツォという速い楽章で置き換えてしまいました。しかし、この曲のメヌエットは端正であまり退屈しません。さすがです。中間部のトリオでは2本のクラリネットが旋律と伴奏で活躍します。
第4楽章は、古典交響曲の終楽章はかくあるべし、と思わせる完璧な楽章ではないでしょうか。芝居は泣かせるより笑わせるほうが難しいといいますが、こんなに楽しく美しくワクワクさせてくれる第4楽章はそうありません。しかも、天才モーツァルトはそれだけでは終わらない。いや終わるんですがその終わり方が……。 (清木 満)
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